QP やべきょうすけ 高蝶智樹

インタビュー

高橋ヒロシ先生とは、クローズの製作以降はもちろんですが、それ以前からプライベートで親しくして頂いています。
先生はシルバーアクセサリーがお好きなんですが、ずっと身につけていらっしゃるんですね。例えばダーツをする時でもそのままプレイされてて、僕が「邪魔にならないんですか?」と伺うと、「常に、身につけているものだからね」と一言だけ仰ったんです。
身に付けた以上、ずっと身につけるというシンプルなことを、当たり前のようにされる『イズム』みたいなものを先生のこの言葉には強く感じますし、その高橋ヒロシが生み出したQPの我妻涼というキャラクターにも同じイズムを持っていると思っています。

衣装合わせ前に、三池監督とスタイリストと三人で、じゃあそのイズムを象徴するアイテムとはなんだろうと考えたとき、自然と、サングラスであり、ライターであり、シルバーアクセサリーだねという話になりましたね。
やべきょうすけプロフィール
サングラス 購入はこちら
サングラス~我妻涼が見る風景~

最初に思ったのは、このQPというドラマのビジュアル面での象徴である我妻涼が付けるサングラスというものは、既製品を使うのでなく、信頼できる方に1から作ってもらうべきだ、ということ。じゃあ、誰に任せるか。「SKULL SHITでしょ」というのは、私と髙橋先生ですぐに意見が一致して。長年一流のミュージシャンたちを魅了しているこのブランドの「こだわり」への信頼感を考えると、SKULL SHIT以外の選択肢は、あり得えなかったですね。TV局側から商品化の打診があった時も、「部材も含め、劇中で使用しているものと全く一緒のものであれば」と私が言うと、同席したSKULL SHIT担当者からも「当然です」と(笑)。
実際にモノに落とし込んでいく中で一番考えたのが、レンズの部分。髙橋先生の「原作にこだわり過ぎるな」というご意見もあり、スタイリストの前田氏と共に、ブラックやブラウンを提案してきましたが、三池監督の「……でも、グリーンだよね」の一言で決まりました。
髙橋先生のイラストがグリーンのレンズだったから三池監督は、そう仰ったのではないんです。まず普通はかけ難いグリーンのレンズのサングラスを身につけているということは、我妻涼という人間は、全ての事柄を己のフィルターを通して見るということを表しているんだと思います。
全てを拒絶し自分の世界に籠っているブラックのレンズではない、過去のセピア色の世界で後ろ向きに生きるブラウンのレンズではない、「俺は、俺の意思で今こうしているんだ」という意思表明なんだと思います。(やべきょうすけ談)

実際グリーンのレンズを通して見える世界は、「青い」。
映像の中において描かれていない風景。
涼はどんな風景を見ていたのか声が出ない彼から見える世界は、誰にもわからない。
このサングラスをかけることで、我妻涼という人間が見ようとしている風景が、少し、見えるのかもしれない。
ZIPPO~我妻涼の分身~

我妻涼の内面を象徴するものとしてZIPPOを登場させたいなという思いがあったんです。
このZIPPOは、我妻涼が煙草を吸い始めた頃に買ったもので、内ポケットに忍ばせていたおかげで、心臓を貫くはずだった弾丸から我妻涼の命を救います。
コートの内ポケットにこのZIPPOを入れていた為、弾痕がZIPPOの裏側にあたる部分に残っており、そこには見えるはずのないインサイドケースが露わになっています。
ZIPPO画像劇中で使用したZIPPOは、興栄工業さんに特注して実際に穴をあけてもらったんです。 出来の良さにそのままの商品化を考えたんですが、興栄工業さんから「穴を空けたものは発売できません」と言われたので、「じゃあ、穴を空けずに空いた風にして下さい」と無理矢理お願いしました(笑)。
自分が監督をつとめた第4話で、腹心を亡くし、初めて人を殺めた我妻涼は、殺し屋たちとの激闘を終え、現場から去る際に撃たれます。このままアウトローの世界で生きていくと決意したものの、腹心である市井のことを思った瞬間に立ち止って振り返ってしまったのではないか、そして振り返ってしまったが故に、喉を撃たれ声を失ったのではないかと思いながら演出をしたんです。そうだとしたら、このZIPPOは、命を救ってくれたものでもあるし、誰かを想うという事を止めた証、言わば墓標でもあるんですよね。(やべきょうすけ談)

「お前がなんと言おうと、もう戻れねえし、戻る気もねえ」ドラマ冒頭の涼の独白は、誰に向かって言われたのだろうか。
このZIPPOの弾痕を見ながら、自身に向かって言っているのかもしれない。
あなたが手に取ってから、このZIPPOにはどんな傷が増えていくのだろうか。